2016年1月26日火曜日

ぶなニュース №39

復刻版 ぶなニュース 第39号 2003年5月2日発行

○青木ヶ原樹海のブナ巨木
  4月26日、bunaさんと富士山・大室山のブナ巨木を訪れた。 当日、朝のうちは風と小雨の天候であったが、青木ヶ原樹海の進入路に到着したころには快晴となった。
  途中、三国山東南面のブナ林にも立ち寄る。bunaさん曰く「花をたくさんつけている。今年は豊作年のようだ」と。 ブナは一般的に2年に1度、豊作年がある。 これは美味しいブナの実を動物がすべて食べつくさないように、「これでもか、これでもか」と、大判振る舞いする。そして、子孫を増やすというブナの戦術である。昨夜の風雨で、たくさんの花が地面に落ちていた。木に登らずにして、まじかに観察できたので、ブナには悪いが幸運であった。この状態だと今年の秋の実りが楽しみである。10月ごろにはたくさんの実が地面に落ちてくることだろう。 ここのブナの芽吹きは、4月18日頃からで、私が確認したのは、4月20日であったが、すでにこのとき葉はかなり成長していた。この冬は寒かったのでここにきて一気に芽吹いたようだ。

  12時30分頃に、薄暗い溶岩樹形帯を抜け、大室山のブナ林エリアに到着。ここも昨夜の風雨でたくさんのブナの花が落ちていた。折れた枝にもびっしりと花がついている。ここのブナも今年が豊作年のようだ。
  bunaさんは、幹周り450センチのブナ巨木の前に近づくと、いつものようにブナとの挨拶が始まった。先ずブナの気を感じ、自分の体にその気を吸収し、一体となる。そして、会話がはじまる。幹に手をあて、初対面の握手。それから抱き合う。後は少し沈黙があり、さらにブナとの交信は続く。聴診器があれば、多分bunaさんは、ブナの胎動を聴いたことであろう。スキンシップの儀式が終わると次は撮影会となる。美人ブナを前にあらゆる角度からその姿態を撮る。ときには地べたに寝そべり、下から全身を撮影する。 どうやらこのブナ巨木、bunaさんに認知されたようだ。 案内した小生も大満足。このブナのお陰で、ともに喜びを味わうことが出来た。

bunaさんとブナ巨木  2003年4月26日撮影

○ヅナ峠のエンレイソウ
 4月27日、ブナ林内のエンレイソウと山芍薬の状態を確認するため、 山中湖からヅナ峠に向かう。 ここは三国山稜の北側斜面になるため、開花は遅いと思っていたが、日の当たる場所から順に花が咲き出していた。ただし、山芍薬の方は、まだ蕾の状態で 、こちらはまだ時期的に早いようだ。昨年は5月中旬に見たので、これから当分、目が離せない状況が続く。山芍薬の株は10本ほど場所を確認したので、期待が持てる。
  エンレイソウはたくさん咲いており、デジタルカメラのバッテリーが無くなるほど写真を撮ることが出来た。ここ一週間が見ごろである。
  ヅナ峠の守護神ブナ(410センチ)も花をたくさん付けていた。

ヅナ峠のシロバナエンレイソウ 2003年4月27日撮影 

○保護の大切さ痛感
  白神山地が世界遺産に登録されてから観光客が増え、木を傷つけたり、ゴミを捨てたり、森で焚き火をしたりする行為が後を絶たない。「せっかくの世界遺産も小さな不始末が原因で山火事が起き、一発でだめになる」。 ブナの森は狩猟を生業としたマタギたちの生活の舞台でもある。「長い年月を人間と共に生きてきた森を何とかしなければ」
  平成15年4月23日付け日本経済新聞(夕刊)から一部抜粋。

○檜洞丸のブナとバイケイソウ
 4月29日、檜洞丸のバイケイソウと石棚山のブナを見に行く。
  西丹沢自然教室に車を置き、9:30に出発。
  途中、ミツバツツジが美しい。下の方はすでに満開を過ぎていたが、登るにつれ見ごろのミツバツツジが我々の眼を楽しませてくれた。しかし、シロヤシオはまだ蕾の状態。来月の25日の西丹沢の山開きが行われる時期には見ごろとなるだろう。ブナの方は登るにしたがって、イヌブナから本ブナに変わり、やはり下の方から花が咲き出している。山桜にはシジュウカラも止まり、盛んに花を突付いていた。新緑は美しく、生き物たちの活動も活発になっている。すべての生物が待ちに待っていたようで、この季節を謳歌している。石棚山では子連れの鹿を3匹見ることも出来た。
  中間地点にある展望台からは、権現山、畦ヶ丸、その奥に御正体の山容を望む。少し春霞がかかっていたが、西には富士も見えた。
  更に1時間ほど登ると分岐点に出る。ここからは木道を歩くことになるが、すでにバイケイソウは新緑の葉を伸ばし、鮮やかな景観を演出していた。すこし気になる点は、ここのブナが元気がないことで、立ち枯れや倒木も散見された。
  それに登山道東側に迫る不気味な林道開削工事。この林道工事により沢は崩れ、その破壊の上塗りである砂防堰堤工事がその後に続く。林道が完成すれば、今度は一般車が進入し、不法投棄を繰り返す。その最悪の環境破壊である林道工事がここでもその触手を伸ばしている。そしてブナやミズナラなどを伐採し、利用もされない杉・檜を植林する。これは時代錯誤も甚だしい。 表丹沢はこの林道で自然環境が台無しになった。同様のことがここでも徐々に進行している。丹沢に林道や杉・檜の植林とダム、砂防堰堤がなければ、おそらく首都圏でありながら自然が残っているなどの理由で、世界自然遺産にも推薦されたであろう。

  12:30に檜洞丸山頂に到着。30人ほどの登山者がすでに昼食も終わり、寛いでいた。
  14:00下山。石棚山経由で箒沢へ。石棚山周辺のブナはまだ元気で、樹肌もいきいきとしていた。周辺環境も良好に保たれている。
  今回の山行の目的であった。①ブナの開花確認②バイケイソウ若葉鑑賞 ③エンレイソウなどの山野草鑑賞④野鳥の鳴き声・種類観察 ⑤野生動物の観察 などであったが、エンレイソウを除き、すべて満足するものであった。

  9:30(西丹沢自然教室)→ 12:30(桧洞丸山頂)→15:00(石棚山)→17:00(大石キャンプ場)→15:10(西丹沢自然教室)→帰路

檜洞丸のバイケイソウ 2003年4月29日撮影

○厳しい規則
  アメリカの国立公園には厳しい規則がある。 トレイルからはずれて歩いてはいけない。用便はできれば持ち帰る。それが出来ない場合は、トレイルから30メートル以上離れたところで、30センチ以上の穴を掘り、そこでする。だからバックパッカーは必ずシャベルを持参している。紙は必ず燃やして埋める。動物が掘り返すことによって、紙が風で飛び、水辺を汚すということが、その理由。テントは水辺から30メートル以上離れたところに張る。トレイルからも30メートル以上離れ、かつできれば見えない場所に張る。水辺で洗濯などをしてはならない。必ず折り畳みバケツを持参し、30メートル以上離れた場所で洗濯をし、食器などを洗う。洗剤は使わない。使う場合でも、低公害洗剤を使う。焚き火に使う薪は落ちている枝に限る。 たとえ枯れた木でも、立ち木を伐ってはいけない。その切り口が自然ではないから。等々、事細かな規則が決められている。そして利用者はそれをあたりまえのようにして守る。
  (加藤則芳氏記述)